スーパーに並びだすと、つい買ってしまう西瓜。
食べていつも思う。赤くて糖度も高い西瓜を選ぶのだが、やっぱり子供の頃に食べたお爺さんの作った西瓜が一番、美味しいと。
スーパーも、自動販売機も近くになかった頃の田舎。
夏休み、友達3人と宿題を終わらし、縁側に坐って待っていると、井戸水で冷やしていた西瓜を食べやすいように切り、「さあ、食べられよ」と伯母さんが出してくれる。
「咲ちゃん家(ち)の西瓜甘いなあ」と言って、西瓜の種を飛ばしながら食べる「あっちゃん」を真似て、「かっちゃん」「たっちゃん」私の4人が、縁側から少しでも遠くに飛ばそうと、体を反らしたり、ほっぺを膨らましたりの変顔が可笑しくて、笑っては食べ、食べては種を飛ばし、また笑う。
「もう、そんな食べ方して」と叱る伯母さんも笑っていた。
種飛ばしを止(や)め、種を呑み込みながら食べていた私に、「種、呑んだら朝、ヘソから西瓜の芽が出てるってお父さんが言ってた」、「俺もお母さんに言われたから、種出すねん」「あたしも」と、3人に神妙な顔で言われてから、種は出すようになった。
友達が帰ったあと、どうにも言われたことが気になり、西瓜を作ったお爺さんなら知っているだろうと聞いても、「明日の朝にならんと解らんちゃ」と笑うだけ。
仕事から戻った伯父さんに聞くと、「尻からも芽が出た者もいる」と言って伯母さんに怒られていた。
誰も、「西瓜の種を飲んでもおヘソから芽なんて出ない」と答えてくれない。
心配で、いつもより早く目が覚め、おヘソを確かめたことを思い出す。
あの頃、お爺さんの育てた西瓜やまくわ瓜は、甘くて美味しいと評判になっていて、毎日のように、分けて欲しいと近所だけでなく、車で遠くから来る人もいた。
農協に出荷しようと準備していた西瓜を、お婆さんに「安う買えるから来てるだけながに」と、文句を言われながらも「わざわざ遠くから訪ねて来てるから」と、分けてあげるお爺さんを、自慢したい気持ちで見ていた。
お盆が近いせいなのか。西瓜から天国のお爺さんの事を思い出した今日でした。