コロナ感染者の減少が見られない今年のゴールデンウイーク。此処3年ばかり手を入れてない本棚と押し入れに片付けた本の整理をする事にした。
第二次世界大戦前に建てられた家だけあってあちこち土壁の隙間から光が漏れている。阪神大震災時、瓦が落ちた大屋根の修理で雨漏りはないが、家全体が少し傾いている。風の強い日は、土壁の匂いを覆った隙間風が、硝子の仕切り戸を震わしにぎやか。台風の時は天井が吹っ飛んでいくかもと心配になるくらいボロイ感がある。
そんな家なので扉の無い本棚の本は何となく土埃の匂いがする。漆喰壁の押し入れには、除湿剤は欠かせない。匂いや古さは好きな枠内なのだが、五月頃から増えるダニだけは御免こうむりたい。
虫よけスプレーとマスクをして、押し入れの本が入っている衣装ケースを引っ張り出した。本は重い。樟脳(しょうのう)の匂いと、湿っぽさを感じながら本を出していく。
亡くなった父が何度も何度も読み返していた文庫本の表紙は、読み手の汗と年月からくる湿気で薄茶色く染みが模様となっていた。釣り、盆栽、庭木、小鳥、熱帯魚の参考本は多趣味だった父を思い出す。図書館にありそうな表紙のしっかりした文学本、小説、美術の本、仏画、漫画と出していく。(あ~此処に入れていたか)私が買い求めた本たちも出てきた。当然、手が止まる。
「お~い!大丈夫かあ」夫の声で片付けるために此処に居るのを思い出した。
衣装ケースから本を出し散らかしただけの状態を見て「何や本、読んでんのかいな。もう2時間経つで」あまりに静かだから心配になり様子を見に来てくれたのだ。「あんたには本の整理は無理や、何時まで経っても片付かへん、そっちで本読んでて」と離れに追いやられた。
そこには、本棚に無造作に置かれ積まれていた本たちが整然と、背表紙をこっちに向け気を付け姿勢に並び変えられていた。「う~ん」さすが片付け上手な夫。
「出来たよう!」その声に、見にいくと衣装ケースに、パンパンに詰め込まれていた本は何の本か判りやすいように入れられ、空き部分もできていた。
父を思い出す趣味の本類、文庫本は、処分し易いようにまとめ括られていた。「いいの!この本たち処分しても?」と聞くと「ああ、内容も古いし汚くなってるし、おやじの思い出はちゃんと此処に(胸をつついて)あるし」だって。
ケースの中から宮部みゆき・東野圭吾の本を取り出して本棚に収めた。「結局、あんたは片付けんと本読んでて、俺、1人で片付けたね!」やっぱり言われた。(御礼言っておこう!)
「片付け上手のお父さん、今日は本当にお疲れさまでした。有難う!(読みたかった本出してくれて)」